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心の病気についての基礎知識
4.その他の代表的な精神疾患を知ろう
統合失調症、うつ病、双極症のほかにも、さまざまな精神疾患があります。
これらの精神疾患が、うつ病や双極症と同時に診断されることもあります。これを併存症といいます。
不安症/不安障害(Anxiety Disorder)
不安症とはどんな病気?不安症(不安障害)とは、明確な対象がない、または過度に強い不安や恐怖を感じることで、日常生活に支障をきたす精神的な状態を指します。
不安症は適切な治療により症状の改善が期待できます。症状が続く場合や日常生活に支障をきたす場合は、早めに専門医に相談することが重要です
不安症の分類
• 全般性不安症: 日常のさまざまな出来事や活動に対して、過度で制御不能な心配が6ヶ月以上続き、身体的な症状(筋肉の緊張、疲れやすさ、集中困難など)を伴います。
• パニック症: 予期しない強い不安発作(パニック発作)が繰り返されます。パニック発作とは、突然の強い不安や恐怖を伴う身体的な症状(動悸、胸の痛み、呼吸困難感、めまい、発汗や寒気など)が急激に現れる状態です。通常、予測できないタイミングで起こり、その発作は数分から十数分でピークに達します。
• 社交不安(社会恐怖): 他人に評価されることへの強い恐怖や不安を特徴とする障害です。この障害を持つ人は、社交的な状況や公共の場で自分が批判される、恥をかく、または拒絶されるのではないかと過度に心配し、そうした状況を避けたり、強い苦痛を感じたりします。
不安症の治療
• 薬物療法:抗うつ薬(SSRIやSNRIなど)は、不安症状の緩和に使用されます。これらの薬は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きを調整し、不安を和らげる効果があります。
• 心理療法:不安症には精神療法(心理療法)も効果があることがわかっています。不安症の症状改善に対する効果がもっとも確立されているのは、認知行動療法です。
• 生活習慣の改善: 規則正しい生活、適度な運動、十分な睡眠などが症状の緩和に寄与します。生活習慣の改善は治療の補助的な役割を果たしますが、単独で治療としては不十分な場合が多いため、症状が続く場合は専門医の診察を受けることが重要です。
強迫症/強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder, OCD)
強迫症とはどんな病気?
強迫症(OCD)は、強迫観念と強迫行為を主な特徴とする精神疾患です。強迫観念とは、自分では『不合理だ』と分かっていても、何度も繰り返し浮かんできてしまう考えやイメージのことです。この考えを止めようとしても止められず、不安や不快感を引き起こします。例えば、手が汚れているのではないかという過度な心配などが挙げられます。一方、強迫行為とは、その不安や不快感を和らげるために繰り返し行う行動や思考のことです。例えば、何度も手を洗う、ドアの施錠を何度も確認するなどが該当します。これらの症状は日常生活に支障をきたすことが多く、適切な治療が必要とされます。
強迫症の治療法
強迫症の治療には、主に薬物療法と心理療法の二つのアプローチがあります。
・ 薬物療法:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、脳内のセロトニンの働きを調整し、強迫症状を軽減する効果があります。ただし、効果が現れるまでに6~8週間以上かかることがあり、また、うつ病の治療に比べて高用量が必要とされる場合があります。
・ 心理療法:認知行動療法(CBT)、特に曝露反応妨害法(Exposure and Response Prevention, ERP)が有効とされています。
ERPとは、たとえば、「手が汚れているのではないか」と強く不安を感じる患者が、あえて「汚い」と感じているもの(ドアノブや紙幣など)に触れる、などの場面を想定します。その際、通常であれば行ってしまう「手を洗う」という強迫行為を意図的に行わず、不安が徐々に和らぐのを体験する方法です。この方法により、強迫行為を行わなくても不安が和らぐことを学習します。
強迫症治療における留意点
・ 治療の継続性:強迫症は慢性化しやすい疾患であり、症状の改善には時間がかかることがあります。また治療の過程では、不安と向き合うことが必要になるため、一時的に辛いと感じることがあります。しかし、治療を継続することで徐々に症状が改善し、日常生活の質が向上することが期待できます。治療を途中で中断せず、医師と相談しながら継続することが重要です。
・ 個別対応の必要性:患者一人ひとりの症状や背景は異なるため、治療法も個別に調整する必要があります。
・ 家族のサポート:強迫症による患者さんの行動は、家族の生活にも影響を及ぼすことがあります。家族の対応によっては、患者さんの不安を強めたり、逆に治療の妨げとなる場合があります。そのため、家族も正しい知識を持ち、必要に応じて心理教育や支援プログラムを活用することが大切です。
神経発達症/発達障害(Neurodevelopmental Disorders)
神経発達症/発達障害とは?
神経発達症(Neurodevelopmental Disorders)は、発達の過程で脳の機能に特性が生じ、行動や学習、社会的な適応に影響を及ぼす障害の総称です。日本では、これらの障害を総称して発達障害と呼ぶことが一般的です。
以下に、主な神経発達症の種類とその特徴、治療・支援方法、そして家族が留意すべき点について説明します。
神経発達症の主な種類と特徴
• 自閉スペクトラム症(ASD):コミュニケーションや社会的相互作用に困難を抱え、特定の興味や行動パターンに強いこだわりを持つことが特徴です。
• 注意欠如・多動症(ADHD):注意力の持続が難しく、衝動的な行動や多動性が見られます。これにより、学業や職場での適応に困難を生じることがありま
• 限局性学習症(LD):全般的な知的発達には問題がないものの、読む、書く、計算するなど特定の学習分野において著しい困難を示します。
神経発達症の治療と支援
神経発達症の治療や支援は、個々の特性やニーズに合わせて多角的に行われます。
• 薬物療法:ADHDの場合、症状の軽減を目的として薬物療法が行われることがあります。ただし、効果や副作用は個人差があるため、専門医と十分に相談することが重要です。
• 心理療法:認知行動療法(CBT)などの心理的アプローチが、行動の改善や社会的スキルの向上に有効とされています。
• 環境調整:学習環境や職場環境を個々の特性に合わせて調整することで、適応を促進します。例えば、ICT(タブレット学習)や音声読み上げソフトの活用、時間管理のための視覚支援ツール(タイマー、スケジュール表)などを利用することが有効だとされています。
• ペアレント・トレーニング:保護者が子どもの行動特性を理解し、適切な対応方法を学ぶことで、家庭内でのサポート力を高めるプログラムです。家庭内でのルール作りや、子どもの行動に対する適切なフィードバックの方法を学ぶことができます。
神経発達症の治療・支援における留意点
• 個別性の尊重:発達障害の特性や程度は人それぞれ異なります。個々のニーズに合わせた支援計画を立てることが重要です。
• 家族のサポート:家族が発達障害について正しく理解し、適切な対応を学ぶことは、本人の成長と生活の質の向上に直結します。家族同士の情報交換や支援グループへの参加も有益です。
• 専門機関との連携:発達障害者支援センターや医療機関、教育機関と連携し、継続的な支援体制を築くことが大切です。