心の病気についての基礎知識

3.うつ病とは?

うつ病とはどんな病気?

うつ病は、持続的な憂うつ感や興味・喜びの喪失が続き、日常生活に支障をきたす精神疾患です。日本では約15人に1人が一生のうちに経験するとされています。気分の落ち込みだけでなく、認知機能や身体機能にも影響を及ぼしますが、適切な治療を受けることで回復が可能です。

うつ病の症状

うつ病の症状は、精神面・身体面・認知面の3つに分けることができます。
■ 精神面の症状
・気分の落ち込み、持続する悲しみや憂うつ感
・興味や楽しみを感じなくなる(趣味や好きなことに関心がなくなる)
・不安や焦りの感覚が強まる
・イライラしやすくなる
・自分を責める気持ちが強くなる(罪悪感、自責感)
・自殺を考えるようになる(自殺念慮)

■ 身体面の症状
・睡眠の問題(眠れない、または寝すぎてしまう)
・食欲の変化(食欲がなくなる、または過食になる)
・疲れやすさ、強い倦怠感
・頭痛、肩こり、胃痛など身体の痛みや不調

■ 認知面の症状
・集中力が続かない(仕事や勉強に集中できなくなる)
・物事を決めることが難しくなる(決断力の低下)
・記憶力の低下(物忘れが増える)
・否定的な考えが浮かびやすくなる(悲観的な思考)
・考えや動作がゆっくりになる(思考の速度が遅くなる)

うつ病の経過

うつ病の経過は個人差がありますが、適切な治療を受けることで、多くの場合、数か月以内に症状が改善します。しかし、再発を繰り返すこともあり、長期的なサポートが重要です。

うつ病の治療法

うつ病の治療は、薬物療法と心理社会的治療を組み合わせることが効果的です。

■ 薬物療法
 • 主な抗うつ薬について
うつ病の治療において、抗うつ薬を中心とした薬物療法は中心的な役割を果たします。主な抗うつ薬には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)、三環系抗うつ薬などがあります。

 • 薬物療法についての留意点
抗うつ薬が効果を現すまでに2~4週間かかることが一般的です。また、服薬初期は副作用が出やすいですが、徐々に軽減するため、自己判断で中断しないことが大切です。
再発を防ぐため、症状が改善したからといって、服薬や通院を自己判断でいきなり中断せず、主治医と相談してください。

■ 心理社会的治療
薬物療法に加えて、つらい気分をやわらげたり、自分を責める考え方を変化させたり、ストレスへの対処力を向上させたりするための心理療法やカウンセリングを行うことが効果的であるとされています。うつ病の症状改善に効果があることがわかっている主な心理療法には、以下のものがあります。

■ 認知行動療法(CBT): 認知行動療法とは、うつ病に典型的な、自分について、周囲について、将来についての否定的な考え方(認知)に気づくこと、そして、より現実的でバランスの取れた、いろいろな考え方を柔軟にできるように練習する治療法です。自分自身を責める考え方や悲観的な考え方に気づき、より現実的で、バランスの取れた様々な考え方ができるようになることによって、気分を完全したり、ストレスに対処できるようになることを目指します。専門家との対話を通じて少しずつ新たな考え方や行動パターンを習得することで、うつ症状の改善と再発予防につながることがわかっています。

■ 対人関係療法(IPT):対人関係療法とは、人間関係のストレスや問題がうつ病の症状を引き起こしたり悪化させたりしていることに注目し、その対人関係を改善することを目的とする治療法です。具体的には、対人関係における葛藤や孤立感、役割の変化(例えば転職や引越し、家族の病気など)によるストレスに焦点を当て、コミュニケーションスキルを高めたり、問題への具体的な対処方法を見つけたりすることで、症状の改善を目指します。専門家との対話を通じて、問題となる人間関係を整理し、より良い対人関係を築くことでうつ病の回復を促します。

■ 環境調整
うつ病の治療においては、心身の休養をしっかりととることが大切です。本人が十分な休養を取れるように環境を整えることが大切です。症状が重く安全の確保が困難な場合は、入院治療が必要になることがあります。
 
■ 心理社会的治療
薬物療法に加えて、つらい気分をやわらげたり、自分を責める考え方を変化させたり、ストレスへの対処力を向上させたりするための心理療法やカウンセリングを行うことが効果的であるとされています。


うつ病は適切な治療とサポートにより、回復が期待できる病気です。早期の対応と周囲の理解が、患者さんの社会復帰を後押しします。

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